企業×障がい者就労支援トークセッション

開催の経緯

有希化学(株)と様々な仕事で連携している新潟市内5つの障がい者就労支援施設によるトークセッションを開催。
まだまだ社会には企業と事業所の間に大きな壁がある中で、有希化学と5施設の事例は決して画期的なものではないが、社会の課題解決のヒントとして、少しでも多くの方に知ってほしいと思い、このセッションを企画。
企業側も施設側も、それぞれに、付き合ってみる前に感じていたこと・付き合ってみてわかったこと・そして未来のことを隔てなく意見交換を実施。
KINGOカレッジ:久保田様に中立な立場で進行をしていただきながら開催。

参加者

有希化学株式会社 本間英樹
有希化学株式会社 加藤莉奈
有希化学株式会社 保苅翔篤
ジェイステージ株式会社 奥村留美
ジェイステージ株式会社 梨本昌一
社会福祉法人愛宕福祉会 中野尚文
社会福祉法人愛宕福祉会 栗山優樹
社会福祉法人新潟市中央福祉会 齊藤達也
社会福祉法人中蒲原福祉会 武田悠理
一般社団法人フジライフスマイル 福元淳也

目次

1 開催の趣旨

2 業務取組の状況

3 取組を他の企業や福祉事業所に拡げていくために

4 今後取り組んでいきたいこと

開催の趣旨

本間:福祉事業所と一緒にお仕事をさせてもらう中で、以前感じていた壁やハードルはどうでもいいものである、という気づきを得た。ボランティアでやっているつもりはなく、本当に助かっている。この事実を多くの企業に伝えたい。

業務取組の状況

齊藤:線が見えにくく、最初は難しいと感じたが、できる利用者の手先の器用さに驚く。箱入れ、運搬など他の工程を含めると他の利用者もかかわることができる。入庫すると「ボトルシール入ってきたね」と楽しみにしている利用者も。日常生活ではマイナスにとらわれがちな細かいことへのこだわりの強さが、線に合わせて貼るという作業では生かされている。数を数えることが難しい利用者も、箱に埋まるように入れればよく、力を発揮できる。

梨本:初めての作業であっても、利用者が作業している様子を想像し「やってみよう」と考えるように心掛けている。下から何cmのところにシールを貼ればよいかの判断は難しいが、基準を示せるような補助具を試作し何回か改良を重ねた結果、誰でもできるようになりスピードも向上した。充填作業では液剤をこぼしてしまうという失敗もあったが、なぜこぼれたのか、どうすればよいかを利用者と職員みんなで考えた。利用者自身の考える力を高める機会にもなっている。

奥村:自分自身が、利用者と職員の可能性を見直す機会になった。企業との交渉でも職員が一緒にいることで具体的な話に進んでいく。大変心強く感じている。

中野:取り組める作業の可能性は十分にあると思っている。受託している作業が企業から評価されると、別の作業を紹介してもらえることも多い。こうした積み重ねで福祉事業所が企業から認めてもらえるようになり、信頼されるようになっていく。適切な対価もいただけるようになれば、利用者の工賃を上げることができ、やりがいにもつながっていく。

栗山:ちねる作業(菌を検出するセットのチューブの先端をねじる作業)を依頼されたとき、職員でも難しいと思ったが持ち帰って検討した。小さな傷でも気づいてくれる利用者がいるため、職員とのダブルチェックもでき、質を高めることができた。

福元:イラストの依頼をいただいたのがスタート。5つのすべての施設でマニュアルを共有できるのが強み。まず職員が作業をしてみて、線が見にくいという課題に気づき、クリアファイルを切って目印にする補助具の開発やすべり止めを用意して作業をしやすくした。企業からもらった指示書も分かりやすく修正。利用者が理解するまでに時間がかかる場合もあるが、できたときの達成感は自信につながる。いろいろな作業が入ることで、職員が補助具を開発するなど工夫する機会が増え、職員の支援スキルの質も向上する。

武田:なかなか作業に集中できなかった利用者が、この作業には集中して取り組めている。本人もとても喜んでいる。「また依頼されるかも」と期待している。

保苅:最初は福祉事業所に頼んで大丈夫なのかな、という不安もあった。実際には、こんなに早くできるんだと驚くほど助かっている。福祉事業所の施設の方々がこんなに工夫してくれているお陰なんだと、あらためて感謝している。もっといろいろな仕事を提供できるように自分も努力したいと思う。

加藤:自分たちが考えていた補助具よりもずっといいものを作られていて、さすがだと思った。

本間:不良品が出たとき、自分たちにとっても分岐点があった。ちゃんと言うべきか、仕方がないとあきらめるか。迷ったが、ちゃんと伝えることで改善され、私たち自身も、仕方がないとあきらめてはいけないのだと、意識を変えることができた。

取組を他の企業や福祉事業所に拡げていくために

中野:発信力が必要。一方で、対価を下げなければ仕事をもらえないのではないか、という不安が福祉事業所にはある。はろはろでは、以前は最低賃金の6割を基準として企業に提案し、仕事の内容をみながら価格交渉を取り組んでいた。現在は仕事内容をみて適正価格で契約を継続していただいている。

福元:仕事を依頼する企業向けのホームページを作成したところ2カ月弱で4件の依頼があった。仲介業者を通さず、直接交渉できるので対価も高い。フジライフサポートでは、SNSをフル活用して発信している。企業と福祉事業所のそれぞれのニーズをマッチングできるサイトやアプリの開発にも取り組みたいと考えている。

齊藤:他の福祉事業所の提示する単価が安く、仕事を取れなかったことがある。安売り競争になってしまうことが心配。仕事のクオリティを上げていく努力も必要。内職仕事を集めて福祉事業所に流す業者もいる。そこが中間マージンを取るので、結局安い単価になってしまう。

武田:経験不足で計算方法も確立できておらず、価格交渉ができる段階になっていない。

梨本:利用者の中でも生産性の高い人が主力となっているが、その人がいないと回らなくなってしまう。他の利用者の力も上げていかないとさばききれなくなってしまう。営業に時間をかけたいが、利用者がいる間は離れられない。営業力の確保は大きな課題。

今後取り組んでいきたいこと

中野:情報や課題を共有できた。この会の成果は大きい。発展性のある企画だと思う。

齊藤:就労移行も併設しており、企業とのつながりは多い。その強みを生かして発信していきたい。

加藤:福祉事業所とかかわることができるような仕事を探していきたい。SNSで福祉事業所の皆さんと一緒に仕事をしていることを発信し、取組の広がりに貢献していきたい。

梨本:地域に必要とされる福祉事業所になりたい。この企画に多くの企業にも参加してもらえたらうれしい。

奥村:利用者の声が入った企業商品の開発が夢。九州で事例がある。

保苅:興味をもつ企業もあると思う。発信して賛同する企業を増やし、仕事を取ってきたい。

栗山:壁を解消していくことが大切。より多くの企業や福祉事業所が参加することで課題解決の可能性が高まる。このチームでのSNS発信もしていけたらいいと思う。

福元:発信事業はウチの強み。営業の重要性を理解し、時間の確保や人件費など経営側が工夫しなければならない。この会は続けていくことが大切。

本間:まだ、取り組んでいない人たちに、今日の情報を届けていきたい。第二弾、第三弾と続けていきたい。